このサイトのタイトル「お気に入りのテン場｣は
私に山とスキーの「いろは」を教えてくれた
熊谷高校山岳部が由来です。

熊高山岳部では一年間の集大成・春山山行として
尾瀬ヶ原をフィールドに4泊5日でスキー合宿を行いました。

私が2年生の春山山行は顧問教官2人、2年生3人、1年生6人でした。
この年は若手OBの都合が合わず、OBサポート無しということもあり
当時史上最弱と評価されたパーティーで望みました。

筆頭顧問の故 村越 昇 先生に連れられて、同輩・後輩と一緒に
大白沢山を目指し、そのベースキャンプとなるのが
至仏岳の麓、猫又川を遡ったところにある通称｢お気に入りのテン場｣でした。

重い荷物を背負い、ようやくたどり着いたその場所は
針葉樹林に囲まれた小さな湿原でした。
今考えれば、特別眺めが良い訳でもないごくごく普通の湿原なのですが
なぜかそのテン場はとても居心地のよい場所でした。

天気のめぐり合わせもあり、山行としてはたいした成果は挙げられなかったのですが
その半面、いろいろなことを学びました。

地図読みの難しさ、雪洞掘りの面白さ、ラッセルでまっすぐ歩くコツ
雪崩危険ポイントとその対処法、ブナの森の美しさ、ミッドナイトティー入れ方
そして山スキーの奥深さと、仲間と山に入ることの喜び。

それまでは先生、先輩に遅れまいとがむしゃらに後をついて行き
体で覚えるだけで精一杯だったのが
ようやく自分の頭で考える余裕ができたのでしょう。

半人前は半人前なりに力を合わせてベースキャンプを築くことができ、
2年間で少しは成長したなという実感と、仲間と共有した楽しい時間が
「お気に入りのテン場」を特別なものにしたのかもしれません。

私に山スキーのすばらしさを教えてくれた熊高山岳部と
山登りを続ける手ほどきをしてただいた村越先生に感謝の意を表し
自分自身が初心を忘れないようにとの想いもこめて
私にとって山とスキーの原点ともいえる
｢お気に入りのテン場｣
をこのサイトのタイトルとさせていただきました。

長い間手元に写真がなく、記憶の中にしかなかった｢お気に入りのテン場｣ですが
このたび熊高山岳部OBの宮田氏のご好意により写真を頂戴致しました。
私が参加した93年春の写真で、村越先生の遺作です。
テントの側に立っているのは私かもしれません。
先生のダミ声が聞こえてきそうです。

あれから10年経ちました。少しは成長したのでしょうか｡
これからも初心を忘れず、新しい「お気に入りのテン場」を探しに
仲間と山に入れたらいいなと思います。

2003年9月　　　　小河 健伸

’93.3 お気に入りのテン場
Photo by 村越 昇

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