超 新 星

 一月、東京での研究室の講義を終えてまもなく、二十日に大分の名説教師である建光行さんの所に、出かけた。檀信徒用の日蓮仏教のテキスト作成のためである。同時に河豚を御馳走して貰うのも目的であった。

 河豚を御馳走になりながら。宗門から出版された日蓮大聖人の「観心本尊抄」の解説書を建さんにお見せした。この書の重要部分を私が執筆したのである。
 観心本尊抄は、日蓮仏教の根本聖典とも言うべき書であり、本尊即ち大宇宙に遍満する仏の命が私たちの心に存在するという究極の真理を説いた書である。

 この解説書の「大宇宙も心の中に」と言うページにあった超新星の爆発の写真を見て、建さんは、「是れは宝石か?」と訊いた。「これは超新星爆発と言って星の進化の過程で、赤色巨星の後に重い星が加速度的に収縮し、その破局的段階として大爆発を起こすんですよ。これがその超新星の写真です。銀河系内では、一〇五四年のおうし座に現れたものなどががあります。」とお答えした。大宇宙のビッグバンのような大爆発の写真が、研磨されたメキシコ・オパールのような明るいブルーと橙色の光体を見せているのである。

 ビックバン(大爆発)理論は、現代の最も有力な宇宙論である。これは宇宙は、約150億年前、高温、高密度の状態から爆発的に膨張して今に至ったとする理論である。この宇宙は空間も時間も物質も全て体積のない特異点と言う一点の状態から始まり、それが分裂して、今宇宙は拡大、膨張しているという。それは、やがては収縮して一点になる。


 永遠の時からこの宇宙を見つめると、宇宙唯一の御本仏からビッグバンのように分裂して生まれ出たアメーバーから人類に至るまでの無数の生命が、互いに補い合い助け合って向上して現在に至っている。つまり私たちは本仏の生命を頂いた分身と言える。私達は、本仏の目となり手足となり口となり、宇宙を再創造しつつそのデータを集めているのである。これらのデータは、宇宙の終わりにビッグクランチという状態になって、一つに集約される。ここに宇宙は、それ自身の進化を遂げるのである。建さんが言われたように、宇宙とは無数の生命の光り輝く宝石なのかも知れない。
平成15年4月

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